身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
 それから、動揺を落ち着けるべく、いつも以上に仕事に集中していた。
 一時間ほど残業して、そろそろ切り上げようかと思い、データを保存する。

 なにげなくスマホを確認したら、新着メッセージが一件。
 成さんだ。

【今日はマチラの副社長と食事してくるよ。帰るときにまた連絡するから】

 マチラ……。

 その社名を見れば、否が応でも彼女を思い出す。

 成さんはあえて詳細を伝えてくれたんだ。
 それは、なにもないから心配しないでっていう証拠。

 私は〝わかりました〟という、もちマロのイラストをひとつ返信し、スマホをデスクに置いた。次の瞬間、ぎょっとする。

 えっ! もちマロのリングストラップがない! 嘘でしょ!

 角度を変えて何度確認してもストラップの存在はなく、デスク周りを探してみても、やっぱり見つからない。

 今日は外出していないとはいえ、この広いオフィス内をいろいろ歩き回ってたから……どこかで落としたんだ。オフィス内なら探せば見つかる可能性はある。

 私は帰る準備を急いで済ませ、今日の行動を辿ってあちこち捜索した。
 が、どこにも見当たらずに途方に暮れた。

 まあ……もう一年以上使ってたものだし。紐が弱くなってきていたのも気づいていて、そのままにしていた自分が悪い。

 頭でそう思っても、落ち込む気持ちは変わらなかった。
 腕時計で時間を確認したら、もう七時になるところ。

 私はあきらめてオフィスを出た。すると、スマホが着信を知らせる音を鳴らした。

 バッグから取り出して確認したら、知らない番号から。

 不審に思いもしたけれど、仕事上いろんな人と名刺の交換もしてる。
 もしかしたら、誰かが登録外の端末からかけてきているのかもしれない。

 そう考え、着信に出た。
< 139 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop