身代わり政略結婚~次期頭取は激しい独占欲を滲ませる~
「や……後悔っていうか……。ご夫妻があのレストランで食事ができたことは喜ばしいんです。……が、成さんの気持ちをきちんと考慮しなかった自分に猛省してます」
「別に俺は怒ってないよ」

 成さんの返答に驚嘆する。

 なんて心の広い人。私のせいで予定も狂ってしまったのに……。

 私は平身低頭して謝った。

「成さん……。本当に本当にすみません。ありがとうございます」
「あの店はまた来ればいいよ。それに今日がきっかけであの老夫婦が店を気に入ってくれたなら、店側からしても顧客が増えてよかったと思うし」

 彼は「ふっ」と優しく笑って、フォローの言葉までくれる。
 うっかりドキッとして、慌てて自制した。

 危ない。あんな思いやりを聞いて目を柔らかく細められたら、ほとんどの女性はきゅんとなっちゃうような……。

 成さんて元々人として魅力あるとは思っていたけれど、一緒に過ごしてからさらにポテンシャルが高いのを実感する。

 今のだって、普通だったら内心面白くなくて、最悪の場合喧嘩にだってなりうる。
 それなのに、私を咎めもせず、あのご夫婦やお店のことまで考えれる余裕さ。

 正直、彼の魅力に惹かれずにはいられない。

 そのとき、彼はさらに信じがたいセリフを口にした。

「俺は梓さんのそういう思い切ったところが好きだな」

 流し目で言われ、たちまち顔が熱くなる。

 どうして成さんは恥ずかしげもなく、こうさらっと……!

 海外にいると表現やアプローチがストレートになるって本当なのかも……。
 危うく絆されてしまいそう。

 リズミカルに跳ねる胸に手を当て、気持ちを落ち着ける。
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