8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
「であれば、俺も聖獣に感謝せねばならない。おのれの下手な矜持で、妻を失わずに済んだ」
「オスニエル様?」
「フィオナ、俺はお前を正妃にする」
これまた爆弾発言に、今度はお腹の底から声が出た。
「はぁ?」
「俺は本気だ。お前が好きだと気づいた。だったら他に妻は要らないだろう。お前が正妃になれば済むことだ」
「だ、だ、だって。オスニエル様は私の国を蛮族だと……。他国の血が入るのなど、嫌なのでしょう?」
「そう思っていたこともあったが、今は違う。お前は俺の国の民を、自分の国民だと言ってくれた。その広い心に、俺は自分の小ささに気づかされた」
「でも」
「愛しているんだ。フィオナ。正妃になると言ってくれ」
両手を掴まれて、美形が近づいてくる。
フィオナは腰が砕けそうだった。好みの顔が、なんだかすごい勢いで押してくる。
一番信じられないのは、喜んでいる自分の心だ。うれしいと、心がはやっている。
「フィオナ、俺を受け入れてくれ」
「ちょ、ちょっと待ってください」
フィオナがパニックになっていると、「ワン!」と大きな叫び声がした。
次の瞬間、ドルフが狼の姿に戻っている。
「ドルフ……」
「うわっ、いつの間に入ってきたっ」
どうやらオスニエルにも見えているようで、突然現れた銀色の狼に驚いている。
『オズボーンの王子よ。貴様、自分が何を言っているのか分かっているのか』
重々しい声で、告げられる。紫の目で見つめられて、オスニエルは彼の正体に気づいたようだ。
「まさか、お前の犬が、……聖獣?」
「そうです。と言っても、私が加護を得ているわけではありませんが」
フィオナが告げると、『いや』とドルフは首を振った。