8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
フィオナとオスニエルはそろって中央に立ち、最初のダンスをした。
オスニエルは戦争にばかり行っていたというが、ダンスは上手だった。ふたりで合わせるのが初めてだとは思えないほど、スムーズに動ける。
「……意外と動きが良いのだな」
「見た目のせいでたおやかとか言われますけれど、私、動くのは好きですもの」
母国でのダンスレッスンも功を奏している。フィオナは、かつての家庭教師に感謝した。
「では今度、一緒に遠出をしよう。馬は乗れるか?」
「乗馬はできません。でも、乗せてもらうのは好きです」
ぼそぼそと話しながら踊る。なんだか秘密の会話をしているようで、楽しくなってくる。
(……信じてもいいのかな)
つないだ手が熱い。オスニエルの気持ちを、信じたくなる。
彼の瞳が、ループした人生では一度も見たことのない優しい光を宿していて。フィオナは彼の言葉を信じてみたくなっていた。
音楽が終わってからも、手を離すのが寂しいと思うほどに。
弾んだ息のまま、ふたりは人の輪の中に戻る。
「次は私とですわ」
ジェマ嬢が目を輝かせて待ち構えていた。オスニエルは眉を寄せ、フィオナの腰を掴んだ手に力を込める。
「悪いがジェマ嬢……」
「お約束でしたものね。オスニエル様、私は休んでおりますわ」
オスニエルの言葉を制して、フィオナは自分から、彼の手をジェマに渡した。
そうしても、きっと彼は自分の元へ戻ってくるのだと確信が持てたのだ。
ポリーとカイは踊っているうちに離れてしまったようだ。輪の反対側からこちらに向かって歩いてくるのが見える。
ひとりの令嬢が、グラスをふたつ手に持っていて、フィオナに差し出してくれた。
彼女は確か、ステイシー・ミルズ侯爵令嬢だ。リプトン侯爵家に続くお家柄で、家門の立ち位置を意識してか、これまではあまりフィオナに関わってくることはなかったが、今日は何度か目が合い、親し気な笑顔を向けてくれていた。
「素晴らしいダンスでしたわね。こちらをどうぞ」
「ありがとうございます」
フィオナは熱くなっていたこともあり、それを一気に飲んだ。炭酸が聞いていて冷たくてとてもおいしい。
「フィオナ様、ダンスがお上手なのですね! 私、以前からフィオナ様と仲良くなりたいと思っておりましたの。失礼でなければ、私のお茶会にご招待してもよろしいでしょうか」
「まあ、ありがとうございま……」
溌溂と笑う令嬢に、フィオナは愛想笑いを張り付けた。けれど、今度は胸のあたりが熱くなってきた。
「……す。うっ」
まわりの音が遠くなり、熱で周りの人々が歪んで見える。そのうちに目の前が真っ暗になり、体の力が抜けていった。
「フィオナ様!」
倒れるフィオナを抱き留めたのは、駆けつけてきたカイだった。
オスニエルは戦争にばかり行っていたというが、ダンスは上手だった。ふたりで合わせるのが初めてだとは思えないほど、スムーズに動ける。
「……意外と動きが良いのだな」
「見た目のせいでたおやかとか言われますけれど、私、動くのは好きですもの」
母国でのダンスレッスンも功を奏している。フィオナは、かつての家庭教師に感謝した。
「では今度、一緒に遠出をしよう。馬は乗れるか?」
「乗馬はできません。でも、乗せてもらうのは好きです」
ぼそぼそと話しながら踊る。なんだか秘密の会話をしているようで、楽しくなってくる。
(……信じてもいいのかな)
つないだ手が熱い。オスニエルの気持ちを、信じたくなる。
彼の瞳が、ループした人生では一度も見たことのない優しい光を宿していて。フィオナは彼の言葉を信じてみたくなっていた。
音楽が終わってからも、手を離すのが寂しいと思うほどに。
弾んだ息のまま、ふたりは人の輪の中に戻る。
「次は私とですわ」
ジェマ嬢が目を輝かせて待ち構えていた。オスニエルは眉を寄せ、フィオナの腰を掴んだ手に力を込める。
「悪いがジェマ嬢……」
「お約束でしたものね。オスニエル様、私は休んでおりますわ」
オスニエルの言葉を制して、フィオナは自分から、彼の手をジェマに渡した。
そうしても、きっと彼は自分の元へ戻ってくるのだと確信が持てたのだ。
ポリーとカイは踊っているうちに離れてしまったようだ。輪の反対側からこちらに向かって歩いてくるのが見える。
ひとりの令嬢が、グラスをふたつ手に持っていて、フィオナに差し出してくれた。
彼女は確か、ステイシー・ミルズ侯爵令嬢だ。リプトン侯爵家に続くお家柄で、家門の立ち位置を意識してか、これまではあまりフィオナに関わってくることはなかったが、今日は何度か目が合い、親し気な笑顔を向けてくれていた。
「素晴らしいダンスでしたわね。こちらをどうぞ」
「ありがとうございます」
フィオナは熱くなっていたこともあり、それを一気に飲んだ。炭酸が聞いていて冷たくてとてもおいしい。
「フィオナ様、ダンスがお上手なのですね! 私、以前からフィオナ様と仲良くなりたいと思っておりましたの。失礼でなければ、私のお茶会にご招待してもよろしいでしょうか」
「まあ、ありがとうございま……」
溌溂と笑う令嬢に、フィオナは愛想笑いを張り付けた。けれど、今度は胸のあたりが熱くなってきた。
「……す。うっ」
まわりの音が遠くなり、熱で周りの人々が歪んで見える。そのうちに目の前が真っ暗になり、体の力が抜けていった。
「フィオナ様!」
倒れるフィオナを抱き留めたのは、駆けつけてきたカイだった。