8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 十三歳の儀式で加護を得られなかった後、周囲の、フィオナへの批難の目は強くなった。勝手ばかりしているからだと監視を強められ、令嬢らしくなることだけを強いられた。

 思えばあの辺りから、生きづらくなっていったのだ。周囲が求めるような存在にならなければならないと、自分を曲げて生きるのが習慣になってしまった。

(そうよ、人の求めるような自分になろうなんて、間違っていたんだわ)

 他人の言う『幸せの形』がフィオナにとっても幸せだなんて決まっていない。自分がどうすれば幸せかなんて、自分にしか分からないのだ。
 だったら自らで行動したほうが、効率がいい。

(だとすれば、まずは判断できるくらい知識がないといけないわ)

 側妃とはいえ、王太子妃には違いない。歴史や地理の勉強は大事だ。語学も重要だろう。
 以前と違い勉学に身を入れ出したフィオナに、家庭教師は頬を緩めた。

「大国に嫁がれることになり、フィオナ様にも王女としての自覚が生まれたようですね」

 自分としてはこれまでも真面目にやっていたつもりだったが、先生がそう言うくらいだから、今までは全然身が入っていなかったのだろう。フィオナは恥ずかしくて黙りこくった。

「いかがでしょう。ダンスのレッスンも増やしましょうか」

「いいえ。そちらはいいわ」

 社交に関しては、これまでの人生でも求められはしなかった。フィオナはあくまで側妃であり、社交場には正妃が出る。

「私は側妃ですもの」

 ポソリと言うと、先生は感極まったようにフィオナの両手を掴んだ。

「フィオナ様。あなた様の努力は、いつか必ず実ります。ですからそんな風に落ち込まずに」

「落ち込んではないわ。事実を言っているだけ」

「お綺麗で努力家な姫を愛さない男などいませんわ。やはりダンスレッスンも増やしましょう」

 なぜだかすごく同情され、優しくされた。
 そんな褒め言葉をもらうことも、これまでのループ人生にはなくて、フィオナはうれしくて自然に頬が緩んでしまった。 

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