8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
「なあ、フィオナは本当に死んだのか?」

 ドルフはなぜか何もない空間を見つめ、首を振る。

『死んでは無いな。生きている。ただ、今のままでは目覚めることはないだろうな』

「どうすれば助けられる?」

『そうだな。ブライト王国の王太子、エリオットを守護するフクロウの聖獣なら、どんな薬でも調合できる。だが、あいつに頼むには、ブライト王国に行かねばならない。あいつは、現王太子から離れないからな』

 ブライト王国までは片道で五日の距離だ。往復していては十日もかかってしまう。それまでフィオナの体がもつのだろうか。

「いや、もっている間に行くしかない。であれば、俺が行ってくる」

『馬鹿な。王太子が突然乗り込んでいけば外交問題となろう』

「だが、フィオナの命がかかっているんだ。俺が休まず馬を駆ければ、五日の距離は三日でいける」

『それでも間に合わんだろう』

「だが、なにもせずにいられるか! 俺はフィオナをどうしても救いたいのだ」

 オスニエルの叫びが、小さな部屋中に響き渡る。そんな彼に、ドルフは静かに問いかけた。

『別に、お前は妻がフィオナでなくともいいのだろう? だったら捨て置けばいい。俺はフィオナの時間を巻き戻し、新しい未来を一緒に描く』

「やり直したとき、俺はまたフィオナに会えるのか?」

『さあな。それまでの人生ではお前がフィオナを殺していた。俺からすれば滑稽だ。お前が、フィオナの命を請うなどと』

「そんなのは駄目だ! やはり今の人生でなければ。頼む。……どうかフィオナを救ってくれ」

『……ふん』

 ドルフが空を見つめると、ぴしりと空気が固まった
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