8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 エリオットは納得し、彼等に協力することにした。

「僕の聖獣にお願いすればいいんですね。姉上を救う解毒剤を作るように」

「できるか?」

「頼んでみます。彼女……ホワイティは優しい子ですから、聞いてくれると思います」

 エリオットの口笛が響き渡る。他のものは止まった空間の中に、羽音が響いてきた。

『どうしたの、エリオット』

 あらわれたのは白フクロウだ。白い羽に金色の瞳を持っている。エリオットのすぐ近くでゆっくりと羽ばたくと、伸ばした彼の腕に止まった。

『あら、ドルフ様じゃない』

『久しぶりだな。ホワイティ』

『フィオナと一緒にオズボーンへ行ったのじゃなかったの』

 そこからは聖獣同士が話を進めた。ホワイティは一通り話を聞き、頷くと、『待っていて』と言って羽ばたいて行ってしまった。

「待ち時間の間、お茶でも……」

とエリオットは言ったが、勝手に国境を越えたことを咎められても困る。
「俺が来たことは知られたくない」とオスニエルは突っぱねた。
 大した時間もかからず、ホワイティは戻ってくる。

『多分これで大丈夫だと思うわ。これがフィオナの旦那様? あの子ようやく見つけたのね。自分のために、泣いてくれる人』

「は?」

 オスニエルはおののき、目尻を触った。泣いてなどいない。濡れてなどいない。

『私は聖獣よ。分かるの。あなたの心がずっと泣いてる。大丈夫よ。この薬であの子は目覚める。そこから先はあなたたち次第だけど』

 オスニエルは、聖獣の存在など最初は信じていなかった。けれど、ドルフやホワイティに出会い、その人間離れした力を目のあたりにして、畏怖の感情が湧いてきていた。

『心配しなくても、私がこの国を守るわよ。力が足りなければ知恵で。補えばいいでしょう?』

『まあそうだな。俺は国を守ることには興味がない。お前に任せた』

 早々にエリオットとホワイティと別れを済ませ、オスニエルは再びドルフにまたがる。
 ドルフは空を駆ける。一瞬で景色が変わり、冷たい外気はやがて温暖なものへと変わる。

『オスニエルよ』

「なんだ?」

『フィオナを泣かせたらお前を殺すぞ』

 突然、ドルフが脅しをかけてきた。だがオスニエルにはどう考えてもその状況は思いつかない。
< 145 / 158 >

この作品をシェア

pagetop