8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 輿入れの日が近づいてくる。
 フィオナは、結婚式の十日前にブライト王国を出発した。かの国の首都までは五日の距離なのだが、事前に準備もあるため、式に出席する弟よりも先に出発する。

「フィオナ様。どうかお気をつけて」

 名残惜しそうに、見送ってくれるのはローランドだ。彼は今、フィオナの護衛騎士を解任され、エリオット付きの護衛騎士になっている。

「ローランド、弟のことを頼みます」

「かしこまりました。お式にはエリオット様の供として参ります」

 父と弟との別れを済ませたあと、フィオナはドルフを抱えて馬車に乗り込んだ。
 もうひとりの幼馴染であるトラヴィスは国境までの護衛の一員だ。フィオナを乗せた馬車を囲むように騎乗した護衛が四人、輿入れ道具を積んだ馬車二台を守るのに更に四人の護衛が一緒に移動する。

「出発します、フィオナ姫」

「ええ。お願い」

 馬車が動き出すと、どこからともなく拍手が湧き上がる。城を抜けてから、王都を出るまでそれはずっと続いた。国民が、国のために嫁ぐフィオナに声援を送る。

(いい国民よね。加護の得られなかった私のことも、ちゃんと王族として愛してくれた)

 フィオナはできるだけ幸せそうに見えるようにほほ笑んで、窓から手を振った。
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