8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 インデスの街までは十分もかからない。領主はフィオナの顔を見知っていて、すぐに捜索隊を派遣すると約束した。
 領主は、街よりも手前で襲われたフィオナが、なぜ街を通過して国境まで行ったのかを不思議に思い、こっそりとフィオナに尋ねたが、いい説明が思いつかず、フィオナは笑ってごまかした。

 一連の手配が整い、フィオナは領主の屋敷で風呂を借り、身支度を整え直す。
 すべて終えて戻ると、オズボーン側の護衛がしびれを切らしたように待っていた。

「では姫様は王都を目指しましょう」

「……ええ」

 今回のことを暴露すれば、世論は味方につけられる。しかしながら今のブライト王国の武力では、オズボーン王国に適わない。これを発端として戦争となっても、勝ち目はないだろう。

(ここは恩に着せるというか、とにかく彼らの弱みとして握っていたほうがよさそう)

 うまくすれば、今後の生活に有利になるよう交渉できるかもしれない。

(トラヴィスたちが無事だといいけれど)

 フィオナは数日共に過ごした護衛たちのことを思いながら、再び馬車に乗り込んだ。
 ドルフはすぐに膝の上で丸くなり、健やかな寝息を立て始める。彼に護衛の無事を確認してきてほしいとお願いしたいけれど、きっと聞いてはもらえないだろう。

「全く、平和なものね」

 それも聖獣だというならばあたり前だ。彼が本気で怒ったとき、この世にあるどの国だって、彼を止めることなどできないのだろう。力あるものには、自由が許されるのだ。
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