8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~
 彼を撫でながら、フィオナはこれまでの人生について考えた。

(それにしても、どうして何度死んでも、ここに戻ってきてしまうのかしら)

 八度目にもなれば慣れてしまったので、驚きはないけれど、いまだに原理はわからない。

 最初の人生では、フィオナはオズボーン王国に側妃として嫁ぎ、一度も夫に愛されることもないまま、自分の国が夫に滅ぼされるのを見て、絶望しながら自死した。
 夫への恨みを頭の中で考えているうちに痛みが消え、目を開けると、先ほどのシーンに戻っていたのだ。
 不思議なその現象を、パニックになりながらもフィオナは受け入れた。

 二度目の人生では、政略結婚に抗った。オズボーン王国はそれを不服とし、三年かけてブライト王国を制圧した。当然、王家のものは全員処刑。フィオナも短い人生を散らせた。

 そして三回目。今度は政略結婚を受け入れたが、護衛騎士として連れて行った幼馴染の近衛騎士ローランドと不貞を疑われ、処刑された。

 四度目は国を捨てて逃げようというローランドとトラヴィスの誘いに乗り、平民としての暮らしを選んだ。しかし王国は、輿入れを断ったブライト王国に反逆の意志ありと攻め入られ、フィオナは国を捨てた王女として蔑まれ、結局は自国の民衆から殺された。

 五度目は夫に愛されようと、必死に頑張った。しかしフィオナが尽くそうとすればするほど、彼はフィオナの裏を疑い、正妃に嫌がらせをしたとして修道院に送られる途中で山賊に襲われ死亡する。
 六度目は護衛騎士として着いてきたトラヴィスによる無理心中。そしてつい先ほど終えた七度目は夫の正妃に毒を盛られた。

 この政略結婚を起点とするたくさんの分岐をこなしてきたが、どの人生においても、フィオナは二十歳までの間に死んでしまう。
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