8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~

(今度こそ死にたくないわね……)

 フィオナは真顔になって考えた。政略結婚を回避しようとすると、必ずオズボーン王国から攻められるのだから、政略結婚自体は受けるべきだろう。
 問題はその後だ。夫となるオスニエル、のちに正妃となるジェマ・リプトン侯爵令嬢。このふたりとうまくやらないと、殺されてしまう。

(オスニエル様は、そもそも私に興味がないのよね。そしてジェマ様は正妃として私が憎らしい……)

 どうせ愛されないのだから、愛を求めるのは止めよう。
 愛されようと頑張ったときも失敗に終わったし、その分だけジェマ様に憎まれた。

(とりあえず、後宮で静かに目立たず暮らしていよう。なにか趣味を持てば、退屈することもないだろうし)

 それから、ローランドとトラヴィスもだ。ふたりを護衛騎士として連れて行ったときも、不貞を疑われて、ろくなことにはならなかった。あのふたりは絶対置いていかなければ。
 どうせ夫はブライト王国を属国扱いにするためだけにフィオナを娶るのだ。最初の人生でも、一度も閨を訪れることはなかったではないか。

(それなのに、愛されようとしてるからいけないのよ。正妃にいちいち嫉妬しているから、面倒なことになったんだわ。人質だと割り切って、彼の目に付かないように生きればいいのよ)

「ワフ」

 ドルフがあくびをする。
 誰かを愛そうとしても、愛を返して欲しいと願ってもうまくいかなかった。だったらもう、恋愛はいい。自分らしく楽しくいられることだけを望んで生きていこう。
 そのためには、自身が楽しめるものを探さなくては。

< 8 / 158 >

この作品をシェア

pagetop