図書室は正しく使いましょう! ~文学少女と不貞男子は恋に堕ちません?~

帰り道



「ちょっと、至。今の子本気なの?」

「俺、もともと処女厨だし。お前、違うだろ?」

「そりゃそうだけど……あの子、至に全く興味無かったよ」

「わーってるよ! うるせぇな!」

至が乱暴に椅子を蹴る。

「ちょっと、それはなくない!? 私、悪くないでしょ」

「お前、ほんとに俺の事好きな訳? ほんとに好きなのに何十番の女でいい訳?」

彼女は言葉に詰まる。

「お前も結局、噂とかおれのビジュアルとか、俺とシたって皆んなに言いたいだけだろ?」

「ち、違うわよ!」

顔を真っ赤に染めて思いっきり否定する。

「ったく。お前に興味なくなった。帰れよ。もう、ぜってぇ抱いてやんねー」

「な、何よそれ!」

「そんなにヤりたいなら、駅でリーマンでもナンパしろよ。リーマンオヤジなら金までくれんじゃね?」

「最ッ低!」

バチン!

高く、乾いた音が図書室に響く。

「いってぇ……」

「わ、わ、わ、私だって! アンタみたいな男、願い下げよ!」

そう言って、自分の鞄を乱暴に掴んで図書室を後にする。

「何だ、アイツ」

ま、いっか。
そう、呟いてから、彼は本棚を巡る。

不貞行為もするが、ちゃんとした利用もするのが至である。

。:°ஐ♡*

「イライラする!!!!」

至を引っ叩いた後、全速力で学校を出た。
公道に出たら走るのを辞めた。駅に向かって歩いている。

「おねーさん、可愛いね! いま、暇?」

こんな日に、ナンパかよ。

「ハ?」

『そんなにヤりたいなら、駅でリーマンでもナンパしろよ』

『リーマンオヤジなら金までくれるかもね』

さっきの、至の言葉が脳裏によぎる。
声をかけたのはオヤジまでいかないけど。
チャラそうな男。
好みじゃない。

「暇じゃないデース」

そう言って無視して道を進む。

「良いじゃん。少し、遊ぼうよ」

しつこいなぁ。

「急いでるんでー」

お前にかまけてる暇は無い!

「なに、バイト?」

くどい。

「貴方には教えませーん」

何で、見ず知らずの人に教える必要があんの? バカなの?

「良いじゃん良いじゃん。奢るからさー」

奢りとか! その見返りに何を要求されるか怖くて堪らないので行きたく無いっ

「うるさい!」

つい、怒鳴ってしまった。

「あ? 歳上にその口の聞き方はないんじゃないの?」

やばい。怒らせた。
そして、ここは、人通りの少ない路地だった。
1本向こうは大きな書店やそれに付随したカフェ、駅ビル、レストラン、コンビニ、スーパー。
それなりに栄えている。

でも、私がいる方は……

「こいよ。優しくしてやれば、付け上がりやがって! クソが! どうせ、遊びまくってんだろ? この、クソアマ!」

こ、こ、怖い。
逃げないと。

でも、男の力は強いし、足はすくむし、力が入らない。
声も出ない。

痴漢に遭った友達にそんなの声上げて、抵抗すれば良いじゃん。
やられっぱなしなんて、バカみたい。
そう思ってたけど、無理だね。フツーに。
声なんて、出ないし、反撃も、できない。勿論、抵抗も。

「ほらほら。口ではそう言っても。嫌じゃないんだろ」

路地に連れ込まれる。
怖い怖い怖い怖い。

これから、何をされるのか、

「い、いや……」

乱暴に壁へ押し付けられる。
セーラー服のリボンを乱暴にむしられる。
ブチッと糸が切れる音がした。

そのリボンで、手を拘束された。
自由が利かない。

万歳をさせる様に手を上に上げられる。

ああ、私、犯されるんだ。

リボンを取った胸元にはスナップボタンが3つ
そららもブチッブチブチブチと糸の悲鳴が聞こえた。

その、ボタンの下の生地まで裂ける。

「たまんないね。最近の女子高生ってこんなエロい下着着てんの?」

だって、それは、至とする予定だったから。
至とするのは嫌じゃ無かったし、シたかったし、楽しみだったけど、コイツは違う!
「や、辞めて下さい」

「さっきまで、あんなに強気だったのに。急にしおらしくなっちゃって! 可愛い!」

男は、笑いながら高い声ではしゃぐ。
コイツは、自分の欲望の為。

至もそうかもしれないけど、でも、実はアイツ、合意がないとシない。

アイツはそういうヤツ。

「まぁ、辞めないけど」

今度は耳元で低い声で囁いてから、そのまま、耳を齧る。舐める。
全身の毛が逆立つ。

さっき、破られた胸元に手が入る。

乱暴な手つき。

今まで、こんな、乱暴な事された事ない。
全部、合意だったし、嫌って言えば皆んな、辞めてくれた。

こういう、乱暴な男に女の子は泣かされてきたんだ。

何もできない自分が悔しくて、涙が出てきた。

「泣き顔ってそそるよね」

これすらもサービスになってしまうなんて。

男は私の脚の間に強引に膝を突っ込む。
怖い。怖い怖い。

手は、依然、胸を弄ってる。

怖い。こわい。コワイ。

「た、助けて……」

助けてほしいけど、こんな、現場見られたくない。

でも、このまま、コイツの思う様になるのは嫌だ。

「助けて!」

勇気を出して、叫ぶ。

「てめぇ、デカい声だしてんじゃねぇよ! オラ!」

思いきっきり、頬を殴られる。

痛い。
口の中に血の味が広がる。

シャキッ
金属の擦れる音がした。

男はナイフを手にしていた。
バタフライナイフってやつかな。

「次、声出したら刺すからな」

男はそのナイフを私の喉元に添える。

声が出ない。

「わかったか!?!」

必死で、小刻みに頷く。

顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃ。
きっと、メイクもボロボロ。

男は胸元から手を抜き、スカートの中に手を入れる。
やらしい手つきで脚をさする。
悪寒がする。

その手は下着の中へ……

悔しくて、怖くて、泣く事しかできない。
それすらも、コイツに取っては、悦び。

その下着も乱暴に剥がされた。

そして、地面に押し倒される。

青い空。
雲がない。
良い天気。

なのに、私は、こんな目に。

一層の事、雨だったら、傘を刺してたら、顔は見えなかったし、コイツも、雨の中こんな事しようとは思わなかったはずだ。

雨だったら。

そんな事考えてもしょうがないけど。
考えずにはいられない。

男は私に馬乗りになって、ズボンのベルトを外そっとしてる。

ズボンを履いていても分かるほどに、男のソレは膨らんでいた。

怖い。

男のソレが怖いなんて思った事、1度も無かった。

でも、今は、コワイ。

ベルトを外すのに夢中になってる間、男はナイフから手を離した。
私の両手は自由が利かない。
ナイフは奪えない。
だけど、もしかしたら!

「助けて!」

「この、アマ、まだ大声出すか!」

男がナイフに手を伸ばそうとした瞬間、男の手はローファーに踏みつけられ、また、別のローファーがナイフを遠くへ飛ばした。

「大丈夫!?」

私と同じ制服を着た、子がかけてくる。
ナイフを蹴飛ばした、ローファーの子。

「あなた……図書室の……」

「喋らなくて良いですよ。もう、大丈夫ですから。ちょっと待って下さい」

男の手を踏み付けているもう1人を見る。
その彼の方にかけていく。

そして、学ランをむしり取り、また私の方へ。
あぁ、助かったんだ。

「これ、借りてきました。着て、前隠して下さい」

そう言って、学ランを来させてくれた。
ボタンもきっちり、上まで、締めてくれた。

現役生ですら、ここまで締める子はそういないよ。

これはきっと、至の弟さんの学ラン。
至とは違う匂い。

まだ、1年生だから、ノリでガチガチだし、生地の香りが強い。

「ありがとう」

「立てる? 大丈夫? 警察呼ぶから。あんな、クソ男、野放しに出来ない」

「ってーな! 離せよ! ガキが! 殺すぞ!」

そう言って、抵抗する。

「黙れ。犯罪者。お前みたいな奴が俺は1番嫌いだ」

弟くんは男の腕を本人の後ろに回させて、そこで逃げられない様にしてる。

「カオル、呼べる?」

「OK!!」

「電話、してきますね。内容、聞きたくないですよね」

聞きたくないけど、

「1人にしないで」

今は、そっちの方が怖い。

「わかりました。大丈夫。もう、大丈夫ですよ、先輩」

なんで、1度会っただけなのに、しかも、気不味い出会いだったのに、ここまでしてくれるのだろう。
名前すら、知らないのに。教えてないのに。

さっき、弟くんに、カオルって呼ばれてた。

「あ、はい。事件です。強姦未遂事件。担当……はい、お願いします……は? 私は目撃者ですよ? ガイシャは別です。はい。はい。犯人? いますよ。同級生が拘束しています。現場ですか? 夢が丘駅の西口。1本入った裏路地です。酒屋の、ところです。はい。すぐきて下さい。あ、ちゃんと、女性警察官付けて下さいね? はい、はい。わかりました。急いでください」

彼女は狼狽える事なく、的確に、警察に通報してくれた。

「ありがとう……」

「いえ、少し、落ち着きました?」

「うん。少しは。でも、まだ、怖い」

怖い。
自分でも震えているのがよく、わかる。

「大丈夫。もう、アイツは先輩に危害を加えたり出来ません。手を出してこようものなら、私が引っ叩きます!」

そう言って、男を睨みつける。

「ンだよ! オメェーもヤッてほしーのか? あ?」

「黙れクソが」

今まで、私にかけてくれた声とは別人の様な低い声で男を罵る。

「お前みたいなクソ野郎のせいで、世の中の女性がどれだけ怯えてると思うんだよ? え? テメェー勝手な欲望を他人に押し付けるな! ガキか! 1人でやってろ! 他人を巻き込むな! いっぺん死ねや!」

罵られた男は勿論、拘束している弟くんまで目を丸くしている。

「さ、先輩。あんなクソ野郎見てると目が腐りますよ。向こう行きましょ。そろそろパトカーが来てくれます」

「やべぇ女……」

男がボソッと呟く。

「まぁ、アイツの言う通りだけどな。テメェはムショで反省しろ」

そう言ってさらに腕を捻られていた。
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