FUZZY
「じゃあ先輩、私、行きますね」
「おう。また明日な」
弘実がちゃんと先輩してるところ初めて見たかも。ちょっとおもしろい。
でも、かっこつけるとかじゃなくて普段どおりの明るくて太陽みたいな、そんな感じ。
「かわいいね」
「なにが?本城?」
「うん、初々しい。若いって羨ましい」
「理乃もまだまだ負けてねーぞ?」
「やめてよ、若さには勝てない」
「そうかー?」
「そうなの」
あと少し若ければ碧生くんと同じ景色を見て共通の話題で話せるのに、とか思うわけよ。年齢って大事だなって実感したもん。そんなこと言っていても時は戻ってくれないし。
連れて来られたのはどこにでもありそうな大衆居酒屋。お礼にしては普通すぎでは?お洒落なバーとか期待したんだけど。…とは言えず、まぁ弘実だもんな。これでいい。あまりいつもと違う動きされたらこっちが戸惑うしね。
「お前、今、お礼の割に普通の居酒屋かよって思っただろ?」
「えっ、うん、思った。だってお礼だからね」
「わかってねーな。ここは俺と理乃が新人だった頃に初めて来た居酒屋だぞ?思い出があっていいだろ?サプライズ」
「ここだっけ?ていうかふたりで居酒屋とか行ったっけ?」
弘実には悪いけどまったく覚えてない。新人の時は一日、一日追われていてそれが全部積み重なっていくから忘れている記憶がかなりありそう…。