FUZZY





「ちびの時からずっとそばにいる俺よりもあいつの方がいいんだ?」

「……聞き方に棘があるよ」


ちょっと意地悪な言い方だったかな、とおつまみを食べて生ビールを飲んだ弘実。

私も気持ちを落ち着かせるように弘実と同じルートを辿る。


「こんな俺はレアだからちゃんと目に焼き付けろよ、理乃」

「……こんな俺?」

「好きな女を前にして俺を選んでほしいって最後に足掻いてる姿。見たことねーだろ?」


……見たことないけど、でもそんな姿にさせてるのが私だと思うと申し訳なくなる。いつもの弘実でいてほしいのに…。

肘をついた弘実の手首にはキラリと光る腕時計が顔を覗かせている。

私たち、大人になったんだね。学生の頃は腕時計は邪魔だー!とか言って携帯で時間を見てたのに、今じゃそれが欠かせなくなっているんだから。

カチカチと針が動いて、私たちの気持ちも変化していって、〝ずっと〟そばにいたのは弘実だけど、〝ずっと〟って永遠じゃないから。


私がそばにいたいって思ったのは、どんな時も沢山の愛をくれる碧生くんなんだ。


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