FUZZY
すぅっと小さく息を吐いて、気持ちを整える。鼓動は速く、音が外に漏れてしまうんじゃないかってぐらいだ。でもここ居酒屋だから、ガヤガヤしてるし目の前にいる弘実にもきっと聴こえないだろう。
「弘実の気持ちは嬉しいよ。すごく、嬉しい。でもね、私は碧生くんを好きになった。人としても、恋愛としても。だから弘実の気持ちに応えることはできない。……ごめん」
正面からぶつけてくれた想いは間違いなく私の心に響いている。
もしも、碧生くんと出会わなかったら今のこの状況も変わっていたのかな。
ううん、それとこれとは違う気がする。私がたとえ誰とも出会っていなくても、弘実の気持ちには応えてなかったと思う。幼なじみが一番心地が良くて、安心できる場所だから。そんな場所をなくすのは私には考えられない。
臆病なのだ、とても。
「ん、わかった」
「ごめ、」
「謝んのはナシ。惨めになるじゃん」
「ご、」
……また謝りそうになってしまった。危ない。
そのあと、何杯か飲んで、お会計へ。私が弘実の看病をしたお礼らしいので財布はしまえって言われたけど、なんだかいろんなことが重なってせめてお金は出させてって思った。言ったら多分怒られるんだろうけど。