FUZZY
びっくりした。びっくりしすぎて声かけられなかった。だってまさかいるとは思わなかったもん。
偶然が二度も。二度あることは三度ある、ってよく言うから次もどこかしら、なにかしらでありそう。
それにしても相変わらずキラキラしている。そして容姿端麗だから女性客がきゃっきゃ言っているのがわかるし、目がハートだ。恐るべしイケメン。この子がいるだけで商売繁盛しそう。
ど平日、しかも週初めだというのに店内は賑やかだ。オフィス街にあるちょっと小洒落た居酒屋だから弘実みたいに大きな声で乾杯の音頭とる人間はいない。やっぱり弘実、うるさいな。
誰が頼んだのかもわからない料理が次々と運ばれてきて長テーブルの上は序盤からごちゃごちゃしている。その中からスライストマトを箸でつまみ、口に運ぶと絶妙な酸っぱさが口内に広がった。
「経理部どうよ、最近」
話題は仕事について。
弘実は肘をついて串に刺さるぼんじりを獣のように荒々しく食べている。
「んー、普通。良くも悪くもない。まぁ、提出書類を期限内に出してこない部があるから、それに関しては滅びろって思ってる」
「おーこわ」
「弘実はどうなの?企画部バタバタしてるそうじゃん。帰れてるの?」
弘実につられて私も串に手を伸ばす。ハートの塩、きみに決めた。
「まぁな。企画は常にだから。新しい商品の提案書が追いつかん」
「そっか。どこも大変ってことで」
私たちの会社は大手食品メーカーで、主にチョコとクッキーが有名かな。