FUZZY
「理乃のやつ、昨日と同じシャツ着てんだよ。飲み会終わったら帰って休むって言ったくせに普通ありえるか?ぜってー家帰ってねーじゃん!」
壁に追い込まれた私のシャツを侑芽に見せるように掴む弘実。
「あ、ケチャップ」
シャツにつく薄くなったケチャップを指さす侑芽。ふたりにケチャップがバレてしまった。
弘実の鋭い目つき。私の瞳からなにかを暴こうとしているのがわかる。
「どうなんだよ、理乃」
「…弘実、あの、」
もう観念して正直に話そうか…、そう思った時、救世主が現れた。
「なーんだ、そんなこと?理乃ね、昨日私の家に泊まったの。色々、話聞いてほしくて。だから昨日のシャツなのよ。だからさ、弘実。女子トイレの前で理乃に壁ドンはやめとけ、寒い」
救世主・侑芽の作り話が私を救い、私への疑いを浄化していく。これ以上疑っても意味ないと観念した弘実がこの場から去って行くのにそう時間は掛からなかった。
残された私と侑芽。
若干の気まずさがありながらも圧倒的に感謝の気持ちが心を埋めている。
「……侑芽、ありがとう」
「全然いいけど」
「うん?」
「なにがあったのか聞かせなさいよ」
「……はい」