FUZZY
「なんか、見てたら悲しくなってきちゃった」
「どういう感情なの、それ」
「わかんない。碧生くんから私って見えてるのかな。どう思う?」
「知らない。まっ、この状態だと確実に見えてないだろうね。あんたちっちゃいもん、背が」
「そっか、そうだよね」
つま先立ちをやめる。
足の裏がぜんぶ地面にくっついて、「もうさっきのはやめて!疲れた!」と悲鳴を上げているようにも感じた。
「見てほしいならアピールしな。そんなとこでただ見てるだけじゃ気づいてもらえないよ」
侑芽のその言葉に納得。
いつの日か樋井先輩も言ってじゃん。答えが見つからないなら行動だ、って。侑芽もまさに今同じような言葉をくれた。
遠いからなんだ。
自分から近づけばいいだけの話。
いつだって〝理乃さん〟って寄り添ってくれたじゃん。その優しさに甘えてなにもかも、なあなあにしていたのは私だ。
女の子たちのボルテージが上がっている。歓声も沸き上がっていて、でもその中に埋もれるなんて今の私の選択にはなかった。
僅かな隙間を見つけて前へ前へと足を進める。ぶつかりながらでも確実に碧生くんとの距離は縮まっている気がして嬉しい。
そしてなにより私は運がいいらしい。
目の前はもうステージなのだから。
「っ、碧生くん!」