FUZZY






当然、私の声は周りに掻き消されてしまった。

そりゃそうだ、これだけの歓声だもの。

碧生くんがしっかり耳掃除をしていたとしてもピンポイントに私の声なんて聞こえ——


「…理乃さん?えっ、理乃さんだ!なんで?」


———ていたみたいだ。


……いやいや、きみの聴力どうなってんの。


まさか聞こえてるなんて思いもしなかったし、でも、もし聞こえてたら嬉しいなっていう淡い期待もしていたわけで。

だから、今、すごく嬉しい。

碧生くんの視界に入れたのだから。




さっきまで、ぼおっとしてた男の子が私を見つけて走ってくる。


「わんっ」

「え、わん?」

「だって前に言ってたじゃん。俺のことわんこみたいって。意味わかんなかったけど、こういうことじゃない?」


……なるほど。

飼い主を見つけて走ってくるわんこ的なやつ。


従順すぎてまるごとぎゅぎゅっと抱きしめたいよ……!!


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