FUZZY





「なんで弘実が?」

「え、あんた気づいてないの?」

「気づいてないとは」

「……いや、なんもない」


私の口からは言わないでおく、と言ってローストビーフを一口で食べた侑芽は飲み干した赤ワインを追加注文した。

意味深すぎない?あ!あれか。やっと私にも春が来たから嬉しくて泣く的な?私も弘実に彼女ができた時はなんだか嬉しかったしな。元々恋愛自体、興味がない男だったし。私が報告したら喜んでくれるだろうか。


と。


テーブルの上に置いてある携帯が震えて画面を見るとそこには【弘実】と表示されていた。なんてタイムリーな男だ。ていうか電話してくるとか珍しいな。

不思議に思いつつ電話に出ると、


『あ、瀬河?俺、柿谷だけど!ごめんな、急に電話して』


なぜか同期の柿谷くんが弘実の携帯で電話を掛けてきた。弘実と同じ部でこれまたフレンドリーな男の子。弘実とはかなり仲がいい。


「ううん。で、どうしたの?なんかあった?」

『いや、宮近がさ、熱出して倒れたんだわ。とりあえずあいつ家で寝てるし様子見に来てやってほしい』

「え、熱ってなんで?!」

『ここ数日体調悪かったっぽいんだけど後輩のミスで今日も仕事出ててさ。で、倒れたってわけ』

「そ…なんだ、教えてくれてありがとう」

『おー。目、覚めた時に野郎の顔より瀬河の方がいいかなって。俺、もう帰るしあとは頼んだぞー!んじゃ、』


ぶちっと一方的に切られる電話。

弘実、滅多に風邪ひいたりしないのに。


……行かなきゃ。


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