若女将の見初められ婚
「志乃。お店のことに巻きこんでほんまにごめんやで。
でも、お父さんもお母さんも、あんたの幸せが一番大事や。
それだけは忘れんとって」
母は野菜を洗いながら、そっと呟く。いつもは陽気な母の声がやけに小さくて、深く胸に響いた。
「わかってる。私も自分の幸せは大事やから」
おどけてみせると、母はホッとしたように微笑んだ。
大きな決断をしたが、気持ちは意外と落ち着いている。どう転ぶかはわからないが、できることが見つかったのだ。とにかく前に進みたい。
私も母に微笑みかけた。