若女将の見初められ婚
お店の裏には母屋があって、廊下で繋がっているそうだ。
今、母屋に住んでいるのは、しの君一人。
しの君が30歳になった時に、はよ結婚してくれという意味を込めて、旦那さんと女将さんは、車で10分程のところにある別宅に移ったらしい。
あの歓迎ぶりは「待ってました!」ってことか。喜んでくれるのは、素直に嬉しい。
母屋を見せてくれるというので、しの君に着いていく。
前を歩く背中をじーっと見る。
ほんとに背が高い。
うちのお父さんが165cmであんまり高くないから、そう思うのかもしれないけど。
残念ながら、他の男の人を間近で見たことがないし。
「仁さんって身長何センチなんですか?」
「185やな。でかい?恐い?」
しの君が立ち止まって振り返る。
「恐くはないんですけど、近くで話してたら、見上げて首が痛くなりそう」
踏み台に乗ったら釣り合うかな。
踏み台を抱えて、しの君の周りをウロウロする自分の姿を想像して笑った。
「そしたら、俺が合わす」
足を屈めて、私の目線に合わせるようにした。
私が合わすことしか考えてなかったのに、しの君が合わせてくれると言う。その心配りが嬉しかった。
「どう?」
急に目線が近くなって驚く。
「イエ、ソンナコト シテモラワナクテモ ダイジョウブデス」
なんで片言?と、しの君は笑った。