LOVEPAIN⑥
「これは何ですか?」


私はそれを受け取り、榊原先生の顔を見た。



「紹介状です。
以前話した近くにある大きなメンタルクリニックに、
僕の先輩が勤めていて。
信頼出来る方なので。
予約は先程話していたより先になりますが、1月の中頃に取れました」


「どう言う事ですか?」


なんとなく、私に病院を移れと言われている事は分かったけど、
どうして?


ナツキが関係ある事は分かるのだけど。


「医者失格だと思います。
私情を挟むなんて。
僕は、海宝さんを思っています。
彼に対してはちゃんと医者と患者として接していますし、
そう思っています。
ただ、鈴木さんの話を聞いていると、
とても僕の心が乱れるんです。
そんな僕が、鈴木さんを救えるとは思えなくて」


榊原先生は、私に申し訳なさそうに顔を伏せた。


榊原先生は、ナツキの事が好きなんだ。


男同士なのに、って驚く気持ちもあったけど、
そう思った私はくだらない、と思ってしまった。


男だとしても、そう真剣にナツキを思っている榊原先生を見て、
頷いた。


榊原先生から見たら私は恋敵で、
まだ私がナツキを大切にしているならばともかく、
私がナツキを傷付けている。


榊原先生から見たら、私は憎い存在なのだろう。


「分かりました。
私は病院を移ります」


私がそう言うと、榊原先生はさらに申し訳なさそうに、私を見ている。


その顔を見ていると、私が憎いわけではないのだろか?


ただ、私がナツキを傷付ける言葉を聞いていて、
この人も一緒に傷付いているんだ。



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