LOVEPAIN⑥



「台本は?」


撮影現場へと向かうベンツの中、
黙って車を走らせる篤にそう訊く。



「それが、まだ出来上がってねぇみたいで。
テキトーに撮るってよ」


「えっ?何それ?」


台本がないって。


それって、一体何をされるのか分からなくて怖い。




「まぁ、なんかヤバそうなら、すぐ俺を呼べよ」


そう言われても、その場に篤が来るなんて、無理。


まだこちらから見えないモニター越しで見ててくれる方が、いい。



私は窓の外を見る。


そういえば、初めてこのベンツの助手席に乗ったなぁ。


後ろの方が、乗り心地は良かったな。


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