レモンキャンディーにさようならを
……なんて淋しいんだろう。






秘密のキャンディーを渡しただけの私のことなんて、記憶からきっと消えちゃうんだ。





「忘れませんよ」


古賀先生は私の目を見て言った。




「絶対に忘れません」






……嘘だ。


そんなの、嘘だ。






「あ、信じてませんね?その表情は」

古賀先生は私の顔を覗き込み、少年のように笑った。



それから、
「川越さんは先生にとって、初めて告白してくれた人になりましたから」
と言って、
「これも秘密ですよ」
と付け加えた。






「え、だって結婚する人は?」


「告白も、プロポーズも、先生がしましたよ」
古賀先生の顔が少し赤くなった気がした。





「先生から言ったんですか……」

複雑な気持ちになりながら、でも、先生の嬉しそうな表情を見て、今は少し心がホッとする。




「川越さん、あとはいつかまた今度、話しませんか?」


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