レモンキャンディーにさようならを
張り裂けそうな胸の中なのに、「良い子だ」って言われると、私はどうしようもなく嬉しい。



まるで魔法の呪文みたい。





「そのキャンディー、あの時のですか?」


先生は私の手に視線を落として、懐かしそうな表情になった。




「もっと、もっと先生とお話ししたかったです」

泣きながら、何とか言葉にする。



「先生はまだこの学校にいますよ。お別れするまで、まだまだ時間はあります」


古賀先生はニッコリと笑ってくれる。


その笑顔はとても優しくて、ずっと見ていられたらいいのにって思った。




そんなふうに思えば思うほど、涙が止まらない。





「……結婚したら、先生は私のことも、この学校のことも、忘れちゃう」



学校を辞めて、実家に帰って、結婚したら。


私のことも、この学校のことも、記憶の片隅に追いやられてしまう。


そしたら。



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