レモンキャンディーにさようならを
「いつか、ですか?」

涙をグイグイとこぶしで拭った。

強引に拭いているから、頬がちょっと痛い。



「そうです、いつか」
古賀先生はそう言って、優しい表情で続けた。

「先生は春になったら遠いところへ行きますが、川越さんが話したくなったらいつでも何度でも、先生は喜んでこの町にやって来ます」


「来てくれるんですか?」





「行きます、レモンキャンディーを持って」







……嬉しい。
何か、言いたい。



でも、言葉が出てこない。





その時、バタバタと保健室に近づく足音が聞こえた。



「いやぁー、お待たせ〜」

カラカラと扉が開いて、鈴木先生が帰ってきた。


私と古賀先生を交互に見て、
「あれ?古賀先生、ずっとここにいたの?」
とほんの少し驚いたような声で尋ねた。



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