Re:START! ~君のバンドに、入ります~
 だけどすごく気が強くて裏表があり、男子がいないところではよくきついことを言っている。

 クラスでは空気のような存在の私は、姫奈ちゃんとほとんど関わったことはない。

 ――だけど、実は。

 私が人前で歌えなくなっちゃったのって、実は姫奈ちゃんが原因なんだ。

 小学校四年生くらいまでは、私は誰の前でも大声で歌うことができた。

 親戚や友達の前で歌うと「詩乃ちゃん、お歌上手だね!」ってみんなよく言ってくれたから、自分から進んで歌っていたくらい。

 まあ、今考えるとお世辞だと思うけどね。

 でも、五年生の時の、音楽の歌のテストの時間に、いつもの調子で私が歌った後。


「高くて変な声―。詩乃ちゃんってぶりっこなのー?」


 と、姫奈ちゃんに言われてしまったんだ。

 その後、姫奈ちゃんと彼女と仲のいい人達にしばらくの間「ぶりっこー」と呼ばれた私は、それがトラウマになって誰かの前で歌うことができなくなった。

 性格だって、それまではわりと明るかったのに、引っ込み思案になっちゃった。


「なんだようるせーな。俺は詩乃に大事な用があるんだよ」


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