俺が好きなのは、ずっとお前だけ。


「ふーん。“ 読むと絶対ハマる ” 小説ねぇ」

「あっ!」


隣から突然伸びてきた手によって、私が読もうとしていた本を、奪うように取られてしまった。


「一之瀬くんっ!」


「この小説、今いろんなところで話題になってるやつだよな? 実は俺もこの本、気になってたんだよね」


一之瀬くんが、本をパラパラとめくる。


あれ? でも確か一之瀬くん。

普段は漫画しか読まないって、私に言っていたことがあった気がするんだけど……これは、興味があるの?


「なぁ、美月。俺もこれ、読みたいなぁ……お前よりも! さ、き、に! 俺が読みたい。
……ったく。いつの間に前島と、本の貸し借りなんてするようになったんだよ。他の男の私物を、これ以上美月に触られてたまるか」


『さ、き、に! 俺が読みたい』のあとは、ボソボソ言っててよく聞こえなかったけど……。


なんで、こんなにも “ 先に ” を強調して言うの? 一之瀬くん。


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