ツキミチカフェにようこそ
 五時ちょっと前に二人組の女性客が帰っていき、表に「close」の札をつける。
「お疲れ様。そっち座って」
 高田さんが四人がけの席を示す。奥の方に座ると「利津、樹生、休憩しよ」と、高田さんはキッチンの二人に声をかけた。
「初日お疲れ。腹減ったろ、食いな」
 利津さんが目の前に美味そうなスコーンを出してくれた。そういえば今日は昼を食いっぱぐれたんだ……腹の虫がぎゅうぎゅうと自己主張を始める。

「それじゃ足らなそうだな。ちょっと待ってろ」
 樹生さんがキッチンに戻り、何やら皿に盛り付けて戻ってきた。おお、タマゴサンドにツナサンド!
「賄いだ。スープもあるぞ」
「ありがとうございます、いただきます!」

 腹の虫に急かされるがままサンドイッチに食いつく。正直パンじゃ腹の虫は大人しくなる気はしないが、食えればなんでもよかった。
「じゃあ、まあ食いながら聞いて。利津はさっき紹介したから、これ、うちの調理担当の樹生。樹生、今日から接客で入ってくれる佐島くん。下の名前なんだっけ?」
「よ、義行です」
 口の中のものを急いで飲み下して返事する。横からスッとマグカップに入ったコーヒーが渡された。利津さん……。

 ありがとうございます、の意味を込めて頭を下げる。利津さんは立ち上がるとキッチンからまた何かを持ってきた。
「これ、新作の満月プリン。試食よろしく」
 そう言いながら全員にプリンを渡してきた。そうだ、聞いておかないと。
「あの、この店って新月とか満月とか、そういうのに関係あるんですか」
 全員が目を丸くした。あれ? ボク……なんこヤバいこと聞いたかな。
「そうか、それを知らずに入ってきたか」
「どういう意味ですか」
「うちのカフェ、ちょっと変わってるんですよ」
「変わってる……?」

 うんうん、と頷く面々に、どういうことか聞こうとしたときに「お疲れー!」と元気な声が響いて、店に誰かが入ってきた。
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