ツキミチカフェにようこそ
「店長」
「あ、君が佐島くんだよね? どうも、店長の日野陽太(ひのようた)です。ごめんねいきなり手伝わせちゃって。その代わり採用だから明日からよろしくね。シフトは雅日と相談して」
 店長の日野さんは一気に捲し立てると、利津さんと樹生さんに向かっていった。
「朝から何にも食ってねーの。なんか腹に溜まるもん食わして。利津は濃いぃコーヒーちょーだい」

 甘えるようなその言葉に、利津さんと樹生さんは同時に立ち上がりキッチンに消えた。
日野さんはテーブルの上の新作プリンをめざとく見つけ、「利津、試食するぞ」と声をかけるとプリンを食べはじめた。
「うん、美味い! 利津は天才だな」
 日野さんはボクと高田さんの視線に気づくと「お前らも試食しな」と勧めてくる。

「いただきます」
 甘いものはそれほど得意じゃないけど、サンドイッチとスープ、スコーンだけじゃ育ち盛りかつ昼抜きの腹にはまだ余裕がある。ボクはスプーンを持ってプリンをマジマジと見た……変わってる。

 ガラスの皿には黒い、とろりとした液体が乗っていて、おそらくそれはクリームとかソースとかなんだろう。けど、プリンに「黒」のソースなんて見たこともない。
 その真ん中にはプリンが鎮座していて、表面には金色の何かが散りばめられてキラキラしている。
「金箔だよ」
「き、金箔ですか?」
「食べられる金箔だから大丈夫」
 高田さんはそう言うとプリンを一口食べた。

「うん、美味い。いいんじゃない?」
「サンキュ。ソースもつけて食べてみて」
 利津さんが日野さんにコーヒーを渡しながら言う。高田さんは黒いソースをスプーンに掬って、プリンにかけて味覚に集中するかのように目を閉じて味わっている。
「ベリーと……麻炭?」
「そ。ブラックベリーのソースに麻炭混ぜて黒くした。でさ、もう少し夜空っぽくしたいから星っぽいので飾りたいんだけど、何がいいと思う?」
「金平糖は」
「甘すぎんだろ。それに露骨すぎ」
「うーん、じゃあ何がいいかな」

 利津さんと高田さんがプリンのデコレーションについて話している間に、樹生さんがプレートを片手に戻ってきた。
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