諦 念
4〗あれから五年の日々

▪▪明奈①side


あれから五年が過ぎた。
その間·····

栞那は、落ち着かない日々を
乗り越えた。

一進一退の日々で
栞那のお父さんは
心配して、何度も鎌倉に連れて
帰ると言ったが····

私と十川さんで止めた。
今、栞那から仕事を取り上げる事は
得策ではない·····と。

栞那自身も皆に心配かけないように
無理して笑ったり
無理して食べて吐いたりしていた。

夜になると自分を責めて
泣き出したりする栞那を
ほっておくことができずに
私は、泊まり込んでいた。

一人で、大丈夫だと言う栞那に
私が大丈夫じゃないから
一緒にいてと、お願いして·····

十川さんは、仕事をセーブしたり
やらせた方がよいと思ったら
無理矢理やらせて
自分も一緒にやる。

食べれなくても
簡単な物を食べさせたりしていた。

課長に上がった十川さん自身
忙しいはずなのに栞那から
目を離さずにいてくれた。

十川さんの栞那への気持ちは
わかっていた。
だが、十川さんは、自分の気持ちを
伝える事なく
栞那に寄り添っていた。

一年、二年を過ぎ
本当に、少しずつ、少しずつ、
栞那は、落ち着いてきた。

夜に泣く事はある。
それは、急に起こるから
防ぎようがないが
出社した栞那の顔でわかる。

一緒に暮らそうとも言ったが
栞那が首を縦に振ることはなかった。

三年、四年が過ぎると
仕事中心になり
深夜まで仕事をする事も多かった。

栞那のデザインや
栞那が打ち出すインテリアの
空間や配置色、配置を求める
お客様が多くて
致し方ない状態となっていた。

五年目には、食べる事も
眠る事も問題なくなった。
(沢山食べたり、ぐっすり眠る
わけではないが。)
前に比べたら数倍良い。

夜、泣く事もなくなりつつあった。

そんな日々の中で
十川さんがインフルエンザで
寝込んだ事がある。

私は、情報を聞いた時
栞那に行くように言った。

栞那は、「迷惑だよ。」
と、言っていてが
私は有無を言わさずに行かせた。
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