諦 念

▪▪一人


母の実家は古いが
綺麗にされていた。

住みやすいように少しずつ整理する。
使う部屋は、沢山要らないから。
使う部屋だけを。

幸い、近くに小さいが
スーパーがある。

始めは、よそ者かと警戒されていたが
母の実家に住んでいる事もあり
「あら、孫さんになるのかい?」
と、言われて
「はい。」と、話してからは
おじいちゃん、おばあちゃんや
おばさん方から話しかけられる。
とても、温かい。

光輝との離婚
三瀬さんへの支払いが決まるまでは
毎日泣いて、嘆いてばかりだった。

父と光輝のお義父さんが
離婚届けのやり取りや
養育費の金額を決めたりした。
光輝は、退職金の全てを三瀬さんへと
支払い。
神戸の部屋を片付けて
会社への支払いをして
海外にでたそうだ。

海外のどこに行くかも
知らされず。
会う事も、話をする事さえなかった。

どうして、自分がこんな思いを
しないといけないのか····と、
三瀬さんや十川さん
三瀬さんのお父さんを
自分の両親を恨み、苛立ちに
心ふるえる事も·····


お産も一人で迎えた。

2780㌘の元気な女の子で
真琴(まこと)と名付けた。

一人の子育ては
本当に大変だった。
なぜ、母すら来てくれないのかと
腹立たしく、嘆きもした。

あまりにも泣く真琴の声に
近所のおばあちゃんやおばさんが
来てくれて····
「すみません。うるさいですよね」
と、いうと
「何言ってるの。
赤ちゃんは、泣くのが仕事よ。」
と、言って
お風呂に入れてくれたり
「あなたもゆっくりしなさい。
産後無理をすると後々大変なのよ。」
と、言って貰えて
私は、涙が溢れた。

それからは、代わる代わる
真琴を見てくれた。

生まれて初めて?
感謝と言う言葉が
胸をついた。

人に感謝をしたことがない
なんて····
人として恥ずかしい
親にさえも、なかった·····
自分一人で、大きくなれる筈もない
のに······

一年間の生活費は、
母から通帳と現金を渡された。

田舎だから、近くに銀行とか
ないだろうと。

三瀬さんへの支払いは
父が済ませた。
それは、仕事を始めたら
返済をする約束だ。

真琴は、比較的健康で
たまに、風邪をひく程度だった。

定期検診には、保健所へと行き
その時に、まとめて買い物をして
タクシーでかえる。
贅沢とは思うが·····
真琴がいるから。

首がすわり
寝返りをして
ハイハイ、たかばい、お座り
捕まり立ち
一歩······

ママ~···とか、マンマ····とか、ねぇ···とか
と、言葉も少しずつ······

だけど、嫌なものには、
口を尖らせてフンと横をむく。
てこでもきかない
強情は、誰似?

あっと、言う間に
一年が来て、
私が、「仕事を探している」
と、言うと保育園と仕事を
近所なおじいちゃんやおばあちゃんから
お世話をしてもらい
ほんとに、ありがたい。
「本当に、いつもありがとう
ございます。」
と、頭を下げると
「真澄ちゃんと真琴ちゃんは、
わしらの孫とひ孫みたいな
もんやから、可愛くてたまらん。」
と、言ってくれる。

私も、何かを皆さんに
お返ししたいから
田植えや稲かり
草むしりなどは、
大きいおじいちゃん、おばあちゃんに
真琴をみて貰い、私が畑や田んぼにでる。

手があれるとか
ネイルがとれるとか
日焼けとか
言って騒いでいた自分が
滑稽にさえみえる。

体を沢山動かして
お腹も減るし、疲れて良く眠る
健康的だ。
< 36 / 49 >

この作品をシェア

pagetop