ひと雫ふた葉 ーprimroseー
真っ直ぐ、柴樹の目を見て言い切る。
これはオレの決めた道。オレの意思や。
兄貴の死にコイツが関係してるんは事実やし、それを完全に許すことはまだできひん。でもかといって兄貴が残していったもん、壊すこともできひんねん。せやから腹括ってここまで来たんや。
柴樹はオレの言葉に項垂れ、黙ってしまう。
……なんや、心地悪いわ。
「まぁ……そういうことで、オレとお前はしばらく一緒におらなあかんねん。その、あ~……さっきの、な、怒鳴ったんは、ほんに……あの……」
……くっっっそ! 言葉出て来うへん!! 謝るとかまともにやったことあらへんに、全身むずがゆてしゃあないわ……!
「ゎる……かった……て、いうか……うん、ほんま……」
……なんやろ、この気持ち……。
顔や耳に熱が集まるんが嫌でもわかる。それを隠すように俯いて左手で顔を覆った。
一瞬、ほんまに気づかれへんくらいに一瞬だけ、柴樹の方を盗み見る。すると驚いた表情をした柴樹とがっつり目が合ってまう。驚いた、というよりドン引きした顔にも見えた。
「……な、なんやねん。文句あるんか」
何も言わずにいられるとだんだん腹が立ってくる。でも柴樹はすぐに勢いよく首を横に振り、オレの左手を指差した。
ほんになんやねん。何がついて……──。