ひと雫ふた葉 ーprimroseー
「でも、紫樹にも〝糸〟が……」
「ああ、これね」
雨香麗が離脱した状態だということを説明しながら〝糸〟のことも話した時、雨香麗が俺の胸元を指さして言った。
同時に俺も離脱していると話せば、雨香麗は急に困ったような顔をして口を開く。
「紫樹の体、大丈夫? 今、無防備……なんだよね」
「あはは、大丈夫だよ。俺の体は父さん達が守ってくれてる」
明るく言いながら俺の家柄も話すと、雨香麗は納得したのか、ようやく笑みを見せてくれた。
「わたしの体……大丈夫かな」
ふと雨香麗が不安そうに言葉を零す。
「……わからない。でも、雨香麗にはまだ〝糸〟がある」
俺の言葉に雨香麗はそっと自身の胸元に下がる、今にも消えてしまいそうな〝糸〟を眺めた。
ぽつり、と小さく「早く帰らなきゃ」と呟いた雨香麗に俺は朱紗が教えてくれた話を口にする。
雨香麗を唯一救えるかもしれない方法。それは〝死の瞬間を思い出すこと〟だった。もちろん、雨香麗はまだ死霊じゃない。
朱紗はちゃんとそこについても説明してくれた。