蒼春
学校に着くとクラス割りを見るために兄と別れた。

『えっと、鈴木、鈴木…あった。1組かぁ。』

クラスを確認してから下駄箱に向かう。

靴を下駄箱に入れようとした時肩に何かが当たってきた。誰かとぶつかっちゃったかなぁ。

『わっっっっ、ごめんなさい!痛くなかった?』

綺麗な黒髪が視界に入る。

『い、いえ。大丈夫です。そ、そっちこそ大丈夫でしたか?』

『うん!新しい靴下だったから滑っちゃっただけ。あー、恥ずかしすぎるっっ。初めて会った人の肩に顔面ぶつけるなんて!』

『え、えっと…気にしないで?私もすごい邪魔なところにいたから…。』

『んー、なんっっって健気な子なの!?もう好き!』

いきなり抱きしめられた。うっ、なんて強い力なんだ…。

『あ、私、一条(いちじょう)(かえで)って言います!あなたの名前は?』

『わ、私は鈴木乃蒼って言います…。』

『よろしくね!私のことは楓って呼び捨てで呼んでね。私も乃蒼って呼ぶからさ!』

『う、うん。』

『よし!じゃあ、教室行こっか!実は教室の場所分からなくて困ってたの。』

『あ、教室はね…。』

そう話しながら2人で並んで歩き出す。いつぶりだろうか、家族以外の人とこんなふうにちゃんと話したのは…。



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