婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「あれは綺麗なだけのお人形さんだ。自分の意思などない。言われたとおりに動くはずだ」

 自分を捨てた男の元でもう一度働くなど、普通の女ならばたしかに拒絶するだろう。だが、オディーリアは普通の女じゃない。人間らしい感情など持たない女だ。そこが気味悪くもあり、便利なところでもある。

「は、はい。では、行方を探ってみます」

 イリムはくっくっと肩を震わせて笑い続けた。

「返してもらうぞ。一応は俺のかわいい婚約者だからな」

 
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