婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「結果的にそれが自分の首を絞めることになったな。クリストフなら、ナルエフとロンバルで剣の構えが違うことに気がついただろうに」

 クリストフは眉根を寄せて、バハルに問う。

「どういうことです? ロンバルの王子から送られた兵は徹底的にナルエフ式に教育するよう進言したでしょう。剣の構えのことも話したはず」

 この発言にはレナートも驚いた。クリストフと揃ってバハルを見つめ、彼の言葉を待った。

「直前になって、わからなくなったんだ。本当にレナートを殺していいのか……だからレナート自身に委ねてしまったんだ。スパイの存在に気がつくかどうか」

 バハルはあえてスパイをそのまま送りこんだと言うのだ。予想もしていなかった裏切りに、クリストフは大きく天を仰いだ。バハルはレナートに向けて、言葉を続ける。

「お前は俺にとって自慢の弟だった。だが、レナートが第一王子だったらよかったのにとみなから言われ続けるのは苦しかった。羨望はいつしか妬みに変わってしまった」
「バハル兄上……」

 バハルは優秀で人望もある。健康に問題がなければ、彼が王位を継いでいたはずだ。
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