婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「もっとだ」
「レナー……んっ……」

 名前を呼べと言ったくせに、彼はまたオディーリアの唇を塞いでしまう。絡み合う舌は互いの熱を増幅させる。頭の芯が痺れて、蕩けていくようだった。

「……俺は今、矢を放ったカシュガル兵が心底憎いな」
「傷が、痛むのですか?」
「いや。この傷のせいで利き腕が痺れてて、使いものにならん。これじゃ、お前を抱けない」
「腕の問題以前に……そういうことはマイトに禁止されています」
「そうだったな。じゃあ、アーリエに戻ってからにするか」

 からりと笑うレナートとは対照的に、オディーリアは真っ赤な顔でうつむいてしまった。

「……そんな日は来ないと思っていたのに」
「そうか? 俺は絶対に来ると思ってたぞ」

 レナートは自信たっぷりにそう言った。オディーリアは少し呆れて、ふぅと息を吐いた。

「では、早く元気になってくださいね」
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