ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 なのにあれよこれよと結局手を繋いだまま店の前まで来てしまった。

「ここ美味しいんですよ、っても昨日木島部長に教えてもらいました」

 松田が連れてきた店は中華料理店だった。
割と会社の近くなのにまだ一度も入ったことのないお店だったので少しワクワクした。
 店の中まで手を繋いで連れて行かれたらどうしようかと思ったが、松田はスッと手を離し「入りましょう」とエスコートしてくれた。
なんでもスマートにこなす松田はやはり女慣れしているんだろうな、とさらに思わせた。

 店内は赤いタイルの床に木目が優しい印象を与えるウォルナットのテーブルに赤い椅子。
中華料理店! と思わせる内装だ。
 私と松田は向かい合ってテーブル席に座った。
昨日、今日と隣同士で仕事をしていた為に面と向かって座るのはどこか違和感を感じる。

「昨日は酢豚食べたらめっちゃ美味かったんですけど、今日は回鍋肉セットにしようかな」

「へぇ〜、じゃあ私は小籠包セットにしよっかな」

 店員さんに料理を注文し、松田に聞く。

「ねぇ、仕事のことで聞きたい事があるって言ってたけど、どうしたの?」

「あ、あぁ、なんでしたっけね、忘れました」

「貴方……」

「まあまあ、美味しくご飯食べましょ」

「ったく……」

 店まで来てしまったのだから仕方ないと思い直し、いい匂いと共に運ばれてきた料理に手をつける。美味しい。
 アッツアツの小籠包、蓮華の上で二つに切るとブワァっと勿体無いくらいの肉汁が溢れ出る。
 松田に少しイラついていたこともすっかり忘れて食べるのに夢中になってた。
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