ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 定時時刻の十七時半。
 心の中でヨッシャーとガッツポーズ。急いで鞄に荷物を詰め松田より少し早く時間差で会社を出た。

"一時間後に迎えに行きますね"

 松田からのメールを確認しニヤケないよう顔の筋肉に力を入れる。別々の電車車両に乗りアパートに帰った。
 部屋に入るなり急いでスーツを脱ぎ、皺にならないようクローゼットに掛けてあった黒のロングワンピースに着替える。長袖部分がレースになっていて腕部分の肌が透けて見えるところが一目見て気に入ったのでこのワンピースを購入した。
 髪の毛は丁寧に巻いてからアップにしバレッタで留めた。
 
(この格好ならお洒落なレストランでもきっと大丈夫だよね……)

 よれていたメイクをキッチリと直し、会社より少しチークを濃いめに塗り、リップも色の濃いものを塗り直した。全身鏡で隈なくチェックし、変なところはないか確認し、ベージュのロングコートを羽織る。
 スマホで時間を確認するとちょうど松田からのメールが届いた。

"あと五分で着きます"

 思わず笑みが溢れる。いつもちゃんと五分前に連絡してくれるところは出会った時から変わっていない。
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