ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
 新人の松田を教えながら新しい企画を出し合い話し合いを進めていたらあっという間に定時時刻の十七時半になっていた。
 企画が決まり忙しくなってくるともちろん残業も続く事が多くなるが、今の時期は基本定時で上がるようにしている。
これも会社の方針だ。
プライベートも充実させる事が仕事へのモチベーションを上げることに繋がるらしい。
 とはいえ開発や、新発売の時期が近くなると残業の連続だ。

 マーケティング部の殆どの社員が帰ったのに、何故か私の隣のデスクにはまだ松田が居る。

「あの、松田君、もう定時だから帰って大丈夫よ?」

「水野さんが帰るのを待ってるんですよ」

「はい?」

「一緒に帰りましょう?」

 デスクの上に頭を乗せ私の方をフニャっとした笑顔で見つめてくる。

「私はまだ仕事が残ってるから帰らないので」

「じゃあ待ってますよ」

「いや、結構です、早く帰りなさい」

「冷たいなぁ、入社初日で色々聞きたい事があったのに」

 残念と分かりやすく表情にでている。
 けれど仕事以外ではこの男はかなりの要注意人物だ。むやみに近寄るなんて自分から獣のいる危険地帯に踏み込んでいるのと同じだろう。
 仕事以外では冷たくあしらう事にした。松田の方を見ずに「お疲れ様でした」と言いキーボードを打ち続けた。
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