ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
「……じゃあ今日の所は帰ります、お疲れ様でした」

 コツコツと真新しい革靴の足音が遠のいて行く。

「さぁて、あと少し終わらしちゃおう」

 グッと背筋を伸ばし、自分に気合いを入れ直して十九時にはなんとか終わった。
 一番最後だったのでフロアの電気を全て消し会社を出た。
 外に出ると少し肌寒く、もうすぐ夏が終わるのを肌で感じる。
 そんな空気を堪能しながら駅まで歩く。
 自宅は会社の最寄り駅から三駅、駅から徒歩五分の1LDKのアパート。
 言うまでもなく一人暮らしだ。

「ただいま……」

 誰の返事もない家でもつい言ってしまう。
 スーツのままドサっとベットに寝転ぶ。今日はいつもの数倍疲れた。
 ふと自分の唇にそっと人差し指を当てる。
まだ少し松田の柔らかい唇の感触が残っているような気がした。

(昼間のあれ……本気なのかな……)

 重い腰を無理やり起こしスーツを脱ぎ開放感に溢れる。
 そのままお風呂に入り、適当に冷蔵庫からご飯と昨日の残り物の肉じゃがを電子レンジで温めて食べる。
 我ながらこんな姿誰にも見せられない……
 ささっと食べお皿を洗い歯磨きを済ませ、あっという間に夜の二十二時。
 ベットに入り明日の予定を頭の中で確認する。

(松田君……明日は何も起きませんように……)

 祈りながらいつの間にか寝落ちていた。
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