ここは会社なので求愛禁止です! 素直になれないアラサー女子は年下男子にトロトロに溺愛されてます。
「水野さん、帰りましょう」

「あ、そ、そうだったわよね、帰りましょう」

 そうだったわよね、とか言っておきながら本当はずっと気にしていた事は松田には気付かれていないだろう。
 デスクの周りを片付け鞄を持つ。
 ニコニコしながら私を待つ松田が可愛くてこれがキュンなのか……と噛み締める。

「お待たせ」

「じゃ、帰りましょう」

「ん」と右手を差し出してくる松田に流石にそれは会社内だしハードルが高すぎて「会社です!」と冷たく言い放ってしまった。もっと可愛い断り方があっただろう! と心の中で自分にツッコミを入れた。

 二人で並んで会社を出て、駅に向かう。今まで気にしていなかったのに好きと自覚すると色んなことが気になりだす。隣を歩く松田と私の身長差、耳の少し下に黒子があるのを見つけた。

……触りたい。

(ひぃぃい、なんて破廉恥な事を思ってしまったの!!!)

「水野さんどうかした?」

「ええ!? な、何でもないわよ! 疲れてるのかな、ははは」

 誤魔化す為に引きつった笑いになってしまう。
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