強面お巡りさんはギャルを愛しすぎている

 相変わらず料理下手なのは変わらない。私はクスクスと笑いながらご飯を少しとルーと人参をスプーンで掬い小さなカレーを作り口に運んだ。
 人参は少し硬く、カレールーも何だか微妙な味わい。でも懐かしい。あの時孤独で寂しかった私を救い出してくれた時と同じ味だ。

「どうだ……?」

 いつもの仏頂面で不安げに私の感想を求めてくる修一郎さんを見て思わず涙が零れた。

「美味しいです。すごく……凄く、美味しいです」

 目尻に溜まった涙を拭きながら、もう一口食べた。なんて幸せなんだろう。私は今、幸せの絶頂にいる。
 しかし修一郎さんは何故か急に席を立ち上がった。

「修一郎さん?」

 寝室に行ってしまった彼の背中を不思議に見つめていると、彼は私がウォークインクローゼットの中に隠していた段ボールを持って戻って来た。

「え、あ、あの、その箱は……」
「中身を見た」

 私は全身の力が抜け、持っていたスプーンをランチョンマットの上に落とした。居竦まり手も足も震えて、頭がクラクラした。

「み、見たって……なんで……」
「たまたま衣替えをしていた時に、見つけて」
「全部見たんですか……」
「あぁ。それで菜摘――――」

 脳裏に"離婚"の二文字がよぎった。私は両耳に手を当て、ブンブンと首を振り叫んだ。
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