淋れた魔法








やばい、まずい、とは思ったけど、一度嘘を吐くと、それはつき通さないとならない気がして。


「だから先輩、受験勉強の合間でいいので、すこーしでもいいので、取材についてきてもらえませんか」


咄嗟に考えた更なる嘘に、ゆり先輩は悩む素振りも見せずに頷いた。


つまり。

クラスメイトや親に言ったら大笑いされるであろうとんでもない嘘をついた代わりに、デートを手に入れました。


なんでよりによって小説家?


本を読むようになったのも先輩の影響だし、先輩が読んだ本以外を読もうと思ったことはない。読んだあとも「おもしろかった」か「おもしろくなかった」かのどちらか以外の感想は浮かんでこない。

感情移入するタイプではないし、映像に置き換えられるほどの想像力もなく、ただ文字を追いかけるだけ。


読書には向いてないと思う。知らない漢字や言葉が出てきた時に調べたりするほうが好きだったりする。


そんなおれが、小説家って……自分でも笑えてくる。耐えた。


だってゆり先輩が興味を持ってくれるとしたら、本に関係することしか浮かばなかったから。

彼女の好きなものはそれしか知らない。


だから、小説家。
だからって小説家。

取材って何。何すんの?


「土屋凜はどんなお話を書きたいと思ってるの?」

「……」


ゆり先輩、背低いから見上げられるの無理。かわいー。小説家について考えるどころじゃない。何かに耐えるほうがしんどい。


「えーっと……ゆ、ゆり先輩は、いろんなジャンルを読んでますけど何が一番好きなんですか」


せっかくの質問に答えられないのは嫌だから、答えは先輩に決めてもらうことにした。ついでに知りたかったことも知れて一石二鳥。

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