戀を手向ける


藤宮守寿と初めて話したのは高校に入ってすぐの頃。

風紀委員として正門前で立ち挨拶をしながら生徒の校則違反チェックをしていたあいつの前を通った瞬間、がっしりと腕を掴まれ「ねえ、不良はもう流行ってないよ」と笑う。


なんだこいつ。と思っていると、つま先で小さい背を持ち上げてネクタイに手をかけてくる。気づいたときにはぎゅうぎゅうと締め上げられてその場にいた全員の笑いの的にされた。


「ふざけんなよおまえ」

「風紀委員がけんかするのはまずいなあ。柔道で勝負する?」

「するかよ、うぜえ」

「きみは入海直矢くんですね。問題児で有名。今日は入学式ぶりの学校でしょ」


それなのになんで俺の名前知ってんだよ。

気味が悪いような、居心地の悪いような、そんな気分がしてその場を逃げるように立ち去った。



2度目ましてはプレハブ教室で体育をサボっていた時。

古いオリエル窓で寝ていると隣にやってきたそいつは「2度目まして、入海直矢くん」と顔を覗き込んできた。


「風紀委員がサボりかよ」


クラスはちがうけど隣のクラスだから合同体育のはず。


「サボりではないよ。課題やったもん」


なんだそれ。課題やれば体育出なくていいとか、そんなん聞いたことねえよ。

怪しんでいると「信じてないでしょ」「まあどっちにしろ入海直矢くんもサボってるんだから人のこと責められないでしょ」「わたしだってきみのこと注意してないでしょ」って得意げに言う。でしょでしょうるせえな。


「入海直矢くんの髪って本当は何色なの?」

「…は、なに」

「は、なに、じゃなくって。わたしは地毛が茶色いんだよ。いいでしょ」


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