これを愛というなら~SS集~
初めては痛いと知っていたけれど、想像していたよりは痛くなかった気がする。

それはたぶん、蒼大くんがちゃんと馴らしてくれたからなのかな。


私の口から溢れる聞いたことのない女の声も、可愛いと言ってくれた。

あんな熱いキスも、鼻で息をするといつの間にか気持ち良くなっていて、夢中で蒼大くんに応えていた。

貫かれた瞬間は痛くて、今もまだ痛い気がするけれど……熱いキスに集中すると痛みは和らいでいる気がしたんだよ。

何回か舌を噛んでしまって、最後はほんのり血の味がしたから………

ごめんね、と伝えると、気にしないでって。


「料理人は舌が命でしょ?」


「大丈夫、このくらいは。明日には治ってるから」


そう言って笑ってくれるんだから、本当に優しい。

だけど、蒼大くんの左腕には龍のタトゥーがあって、それに触れていた。

ワルかったって言ってたよね。

こんなに優しい蒼大くんからは想像出来ないけれど。


これ気になる?と訊かれて、小さく頷くと、俺な、と過去を話してくれた。


暴走族の総長だったんだ。

何度か警察にも保護されてる。

このタトゥーは歴代の総長の証。


「環奈ちゃんが嫌なら消すけど?」


「ううん……消さなくてもいい」


だって、それはワルかったとは言っても、蒼大くんが生きてきた証でもあるんだから。

その過去があって、今の蒼大くんが居て私と出会ってくれた。

消された方が悲しい。


「それなら消さない。俺を助けてくれて……亡くなった俺の前の総長から引き継いだ龍だから。俺は一生、腕に残していたかったんだ。だから……よかった」


ほらね、やっぱり悲しい。

答えは間違っていなかったことにホッとしていた。


「あの人はな、料理人になりたかったんだって。だから俺がこの龍と共に、あの人の夢を叶えたいんだ。料理長みたいな料理人になって」


素敵な夢だと思った。

私の夢なんて……ちっぽけに思える。

だって、倉本さんのような芯の強い女性になりたいだけだもん。

蒼大くんにならなれるよ、って言った後に話すと、すごく素敵な夢だよって言ってくれたから……なれる気がしてくる。

蒼大くんの優しさに触れると、何でもその優しさで、受け止めてくれるんじゃないかって思える。
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