これを愛というなら~SS集~
「チーフの匂い、好きです。香水ですか?」


「香水じゃなく、フレグランスの柔軟剤の匂いかな」


「……すごくチーフらしくて安心します」


そうか、とだけ呟くように言ったチーフに……明日は、と。

定休日です、予定がなければ……このまま明日の夜まで一緒に過ごしませんか?


最初の一夜を共にすることを誘ったのは私だった。

今にして思えば、大胆なことをしたなって思うわ。


「……南は……積極的だな……」


ほら、また苦笑いしながら頭を撫でてくれる。

それは、あまりに優しく愛でるように。

何だかさっきより優しい気もするのは、気のせいかな。


「積極的な彼女は嫌ですか?」


見上げた先の瞳は穏やかで、嫌ではないと明白なのに……なぜ訊いたんだろうね。

こうして今まで恋愛をしてきたから、他の方法がわからないの。


「いや……嫌いじゃない。俺とは真逆だから……寧ろ、ありがたいし好きだよ。明日の夜まで一緒に過ごそう」


「はい!それなら……私の部屋へ来ませんか?」


「いや……女性の部屋は気が引けるから……俺の部屋へ来ないか?」


律儀というか真面目というか……それがチーフなのよね。

少し笑いながら、はい、と答えていた。

きっと、ビックリするくらい綺麗なんだろうな。
< 2 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop