これを愛というなら~SS集~
ご飯をご馳走になって、チーフの車の助手席に揺られて、辿り着いた部屋は……ーー。

リビングの先にベッドルームと思われる部屋があって1LDKの空間で、綺麗ではなく……散らかってるって言葉の方が合ってる気がした。


すまない、と言いながらソファーにあったルームウェアらしき服を退けてくれて、座って待ってて、とベッドルームに消えて行くチーフの背中を、以外だわ、と見つめていたんだよね。


事務所のデスクはいつも綺麗なのに……リビングのテーブルの上にはノートパソコンと、乱雑に積まれた書類らしき物が……


程なくしてベッドルームからルームウェアに着替えて出て来たチーフに、


「チーフって………掃除、苦手ですか?」


「苦手だな……掃除というか……家事全般な」


そう言いながら、テーブルに積まれた書類を纏め直すと……

先にシャワー浴びておいで、とルームウェアを渡してくれた。

これ着て出て来るんだぞ、と。


「あっ……はい……」


何だか少し、間抜けな返事をしてチーフのルームウェア片手に、さっき帰りに寄って貰ったドラッグストアーで買った下着の袋を片手に、バスルームへ。

洗濯機の横の棚にタオルあるから適当に使って、と私の背中に教えてくれた。


不思議だった……

男性の独り暮らしの部屋に入るなんて、初めてじゃないのに……

シャワーを浴びた後にどうしていいのか……わからなかったから。

チーフは何を考えてるんだろう。


入れ替わりでチーフもシャワーを浴びてる間に、脱衣室でドライヤーを借りて髪を乾かしているとーー…磨りガラス越しにシャワーの音がして、ほんのり映るチーフのシルエットを意識してしまう。


こんなに独り暮らしの男性の部屋で、心臓が煩いくらいに高鳴るのは初めてかも。

それはきっと今まで、そういう雰囲気になるのを見越して来ていたから。

だけど、チーフとは……そうなりたいはずなのに……こればっかりは積極的になんて恥ずかしくて……私からなんて言えないと思ってた。

どういう感じで雰囲気を作って、キスをして、身体を晒したんだろう。

それすら今はわからない。

私らしくない。

3年越しの片想いが実ったから?

3年半ぶりくらいに男性の部屋に入ったから?


考えても……考えてもわからないなら、雰囲気に身を任せればいい。

そうだよ。

それがいいって大きく頷いて、ドライヤーを片付けようと、洗面台の扉を開けたと同時に、バスルームの扉も開いて……
固まる私。

固まるチーフ。
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